特別対談
農薬が守る食の未来
安定供給をこれからも
企画・制作/日本農業新聞メディアプロモーション部
2024年に農薬工業会から改称したクロップライフジャパン。
持続可能な農業を未来につなげるため、農産物生産に伴うさまざまなソリューションを展開しています。
日本の食や農業を取り巻く環境が劇的に変化する中、農産物をどう安定供給していくか―。
クロップライフジャパンの岩田浩幸会長と、
鈴木憲和農林水産大臣がそれぞれの思いを語りました。
創薬力は世界最高レベル
岩田会長
食料安保担う農薬
今後も重要な防除手段
鈴木農相:世界的な人口増加、限られた耕地面積、地球温暖化など、農業や食を取り巻く環境は不安定感を増しています。国内でも生産者の高齢化や後継者不足、気象条件の変化により経験則だけでは対処しきれない病害虫の広がりや生育不良が、生産現場を脅かしています。
こうした中で、国民の皆さまに食料を安定的に供給すること、そして何よりも生産現場の皆さまが先を見通せる、そういった希望をもたらすことが我々の使命だと思っています。「農は国の基なり」この言葉を胸に刻み、生産現場の皆さんとともにより良い農業を築いていきたいと思っています。
日本の農業は病害虫や雑草との闘いとともに発展してきました。安定的な生産が可能になった背景には防除技術の発展も大きく、特に農薬が食料の増産、安定供給に果たした役割は大きいと思います。
記憶に新しいところでは、昨年、斑点米カメムシ類が全国的に多発し、現場では徹底した防除が行われました。関係者の皆さまには、現場のニーズに応じた農薬の供給にご尽力いただいたものと理解しています。防除における農薬の重要性、安定供給の必要性を改めて感じました。
また今後、総合防除を推進していく中でも農薬は重要な防除手段と考えています。
こうしたことから農薬は、日本の食料安全保障上重要な農業資材として、食料供給困難事態対策法に基づく、生産に不可欠な「特定資材」に位置づけられています。
他方、農薬には、どうしても「危険」といったネガティブなイメージがつきまといます。しかし、現実には農薬がなければ安定した食料供給は難しい。病害虫の被害で収穫量が激減すれば食料価格が高騰し、国民生活にも悪影響を及ぼしかねない。大事なことは、科学的根拠に基づいて安全性をどう確保していくか、ということでしょう。
Profile 農林水産大臣 鈴木憲和
1982年生まれ。山形県南陽市在住。東京大学法学部卒業後、05年に農林水産省に入省。
12年に衆議院議員に初当選(山形2区)。農林水産副大臣、復興副大臣など歴任し、
25年に農林水産大臣に就任。座右の銘は「現場が第一」。
岩田会長:同感です。特に近年の気温上昇により、病害虫の発生分布の拡大や早期化、長期化などさまざまな問題が生じています。
もともと日本の気候は温暖・湿潤であり、多様な農作物の栽培が可能である一方、病害虫や雑草により農作物が被害を受けやすい環境にあると言えるでしょう。農薬は農作物を病害虫や雑草から守る作物保護のための重要なツールの一つだと思いますが、その使用に関しては生産者や消費者の信頼なくしては成り立ちません。だからこそ、科学的根拠に基づく安全性の確保と適切な情報発信が不可欠と考えています。
他方、農薬の研究開発、いわゆる創薬の話をさせていただくと、1つの有効成分を見いだすまでに10数万の化合物を選抜し、そこから安全性や効果について幾度も幾度も検証するという、気の遠くなる作業の積み重ねが必要です。1つの農薬を生み出すのに発見から10年以上かかることもめずらしくありません。
そうした中、農薬が食料供給困難事態対策法に基づく「特定資材」に位置付けられたことをクロップライフジャパンとしても真摯に受け止めています。昨年夏の斑点米カメムシ類防除の時のように、必要な時にしっかり農薬を生産者に供給できるよう取り組んでいきます。
“持続可能”目指し改称
クロップライフジャパンに
岩田会長:2024年5月に名称を変更しました。「クロップ」は農作物、「ライフ」は生命や持続可能性を意味し、持続可能な農業と食料供給を目指すという役割を名称に込めました。農薬だけに限らない「作物保護関連事業」を通じ、食料安全保障に貢献します。また、世界中にある農薬メーカーによる団体が「クロップライフ」を冠しており、グローバルな潮流を踏襲することも目的の一つです。
鈴木農相:名称変更の1カ月後、24年6月に改正食料・農業・農村基本法が施行されました。同法では食料安全保障を基本理念に据えた他、食料の適正な価格形成も促しています。食料安全保障の確保に向けた取り組みを推進するにあたり、クロップライフジャパンが果たす役割にも期待しています。
Profile クロップライフジャパン会長 岩田浩幸
岐阜大学農学部(現応用生物科学部)卒業。86年に日本農薬に入社。22年から代表取締役社長。
25年5月にクロップライフジャパン会長に就任。「慎重ながらも楽観的に」をモットーに、何事にも誠実に対応する。
トップレベルの創薬力で
防除と環境配慮両立へ
岩田会長:13年から22年までの10年間の世界における新規農薬の開発・上市数のうち、日本メーカーが占める割合は約5割であり、日本の新規農薬の研究開発能力は世界トップレベルと言えます。まさにお家芸と言っても過言ではありません。
日本の農業生産において病害虫・雑草防除が不可欠であること、安全性や環境への配慮がより一層求められていることを念頭に私たち農薬メーカーも日々、新規剤創出に向けた研究開発に取り組んでいます。
新しい農薬はこれまでの農薬と比べると、特定の害虫には低薬量で非常に高い効果を発揮する一方、他の生物への影響は抑えられている、新しい作用機作を持った剤がいくつも生み出されています。
鈴木農相:日本の農薬の創薬力が世界トップレベルというのは頼もしい限りです。
気候変動の影響で、病害虫や雑草の防除の重要性は増すばかり。一方、科学に基づいて安全性や環境への配慮も求められる。こうした問題を解決してくれるのが創薬力であり、この強みを活かして、日本のみならず世界の食料生産にも貢献して欲しいと思っています。
また、RNA農薬のような革新的なタイプの農薬も芽を出してきていて、イノベーションも起こりつつあります。こういった、新しい技術にも大いに期待しています。
農業生産に防除は不可欠
鈴木農相
安全性期す再評価制度
国民の高い関心に応える
鈴木農相:多くの国民が、農薬の安全性に高い関心を持たれています。
農薬は農薬取締法に基づき、関係省庁で科学に基づき安全性が確認された剤のみが製造、販売、使用を許される仕組みになっています。
18年には農薬取締法を大きく改正して再評価制度を導入しました。すでに登録されている農薬についても、最新の科学的知見に基づき改めて評価する仕組みにしたところです。農薬の登録に必要な試験の項目数もこの50年で10項目から100項目程度に増えており、審査は厳しくなっています。
農薬メーカーの皆さんにも世界トップレベルの創薬力で安全性を最優先にした農薬開発にご尽力いただいているものと思っています。
岩田会長:農薬は農作物を病原菌や害虫、雑草から守る「薬」です。海外では農薬をクロップ プロテクションと呼びます。「作物保護」と呼ぶと、農薬のイメージも違いますね。
生産現場からは新規発生や難防除の病害虫・雑草に効果の高い「薬」が求められています。また環境への影響も含め、研究開発の段階から防除効果のみならず、環境や他の生物への安全性を最大限配慮して新規剤の開発が行われています。
特に近年では、標的以外の生物への影響を抑え、ピンポイントで効果を発揮する選択性の高い農薬が主流になりつつあります。これは、日本だけでなく世界の潮流でもあります。
農薬の安全性に高い関心が寄せられていますし、農薬登録を取得する審査も厳格になっています。そのような環境の中で、私どもの創薬力に対し大きな期待を寄せられていると感じていますので、引き続き気を引き締めて対応していきます。
クロップライフジャパンは、食と農に貢献することをビジョンとして掲げています。科学的根拠に基づき登録された安全な農薬の適正使用を推進するとともに、革新的技術イノベーションを開発・普及することで、生産者や消費者の要請や信頼に応えていきたいと考えています。
食料安保やみどり戦略
農薬メーカーに期待大
鈴木農相:日本の「食」を守っていくためには、食料安全保障の確保や環境と調和のとれた食料システムの確立が必要です。農薬の安全性は科学で守られています。今後も食の安全を確保しつつ食料を安定的に供給していきます。また、適切な情報発信を行っていきます。農薬メーカーの皆さまには、みどりの食料システム戦略の実現に向けたイノベーションにも期待しています。
岩田会長:生きることは食べること、そして食べるためには食料を確保しなければなりません。食料が安定的に生産・供給されるためには、農作物を病気や害虫、雑草から守る必要があります。
今後も持続的に安全な食料が皆さまに安定的に供給されるよう、農薬の開発、生産、供給の側面から貢献していきたいと考えています。
私たちは、食料の安定供給や持続可能な農業実現への貢献を念頭に設立された国際的な組織「クロップライフ・インターナショナル」に加盟して活動しています。作物保護にかかわる革新的な技術の開発と普及、ステークホルダーとの連携強化を通じて、農業の持続的な発展を図り、日本と世界の食と農業へ貢献します。
